2人の話は平行線だった。
「できれば、こんな事は言いたくありません
でしたが………
これまでの経緯は、里奈さんから聞いて
います。
既婚者の上司が新入社員と性的関係を持つ
事は、セクハラ以外何ものでもありません。
仮に双方に合意があったとしてもです。
今すぐ、里奈さんと別れなければ、この事は、
父に、社長に報告します。
それで、よろしいですね?」
課長は何か思案しているようだった。
「………それは、今、別れれば、何も
言わない…という事だと受け取っていいのか?」
「そうですね。
ただし、今後、この件に関して、里奈さんを
貶めたり、傷つけたりするような事があれば、
容赦しませんが。」
部屋の中を沈黙が支配した。
そして、しばらくして、課長が口を開いた。
「分かった。
今後、一切、里奈には関わらないと約束
しよう。」



