とりあえず、今日は、課長が来てくれる日だ。

私は、少しうきうきしながら、帰路に着く。

会社付近は、人目につくので、いつも自宅最寄り駅で待ち合わせる。

課長と駅で合流して、買い物に行く。

「課長、何食べたいですか?」

カートを押す課長の腕に掴まるように腕を絡めて歩く。

「ん〜、この前の豆腐ハンバーグがまた
食べたいなぁ。」

「はい!」

課長のリクエストが嬉しくて、私は材料を籠の中にポイポイと入れる。


ワンルームの狭いキッチンで2人分の夕飯を作り、ローテーブルを挟んで2人で食べる。

「うん、おいしい。
里奈は優しくて綺麗で料理も上手で、非の
打ち所がないね。」

「そんな…」

照れて俯くと、課長が私の前髪を搔き上げる。

「ふふっ
里奈はかわいいなぁ。」

私はますます顔を上げられなくなった。

「こんなかわいいから、高岡くんも里奈に
惚れちゃうんだろうね。
里奈はどうなの?
高岡くんの事、気になってる?」

私は首を横にブンブンと振った。

「でも、やっぱりおじさんより、年下の
かわいい子の方がいいんじゃない?」

「私が好きなのは、課長だけですから。」

赤くなる私を見て、課長は満足そうに微笑んだ。

「俺も里奈が好きだ。
里奈に1番に会いたかった。
そしたら…」

課長は、続く言葉を飲み込んだ。


私たちは束の間の逢瀬を楽しんだ。

そしてその後、立ち去る課長の足音を聞いて、張り裂けそうになる胸を押さえて、眠れない夜を過ごした。