課長は何も言わず、視線を机上の書類に移した。

隣の企画課もざわついている。

特に女子社員からは、敵視するような鋭い視線が浴びせられる。


はぁ………
恋人ではなく、婚約者でもやはりこの刺さるような視線を浴びるのか…

覚悟はしていたとはいえ、やはり嬉しいものではない。

しかし、晴生はにこにこととても嬉しそうだ。

フロアのざわめきが少し落ち着いたところで、晴生に言った。

「めっちゃ、嬉しそうだね。」

「そりゃ、そうだろ。
佐々木課長と宇野係長の渋い顔、見たか?
これで、里奈は俺のものだって、みんなに
知れ渡ったんだからな。」

「私は女子社員の視線が痛かったよ。
絶対、何でお前が!って思ってる。」

「いいじゃん。
もう、うるさく言い寄って来なくなって、
楽になる。」

「晴生はポジティブだね〜。
ま、晴生が幸せなら、それでいいや。」