「いえ、結構です。
課長は、まっすぐご自宅にお帰りください。
私も帰りますから。」
私は一礼して踵を返すと、駅に向かって歩き出した。
「待ってよ。
そんなにつれなくしなくてもいいじゃない。
俺と里奈の仲でしょ?」
付きまとってくる課長を振り切るように早足で歩くが、当然、課長の方が足が長く、引き離せない。
その時、スマホが鳴った。
晴生だった。
『里奈?
今、どこ?』
「もうすぐ駅に着きます。」
『よかった。間に合った。
話をしたいから、うちで待ってて。』
「え…
でも………」
『頼む!
今から、社長室に行って、ちゃんと話して
くるから、絶対待ってて。』
晴生の必死さが、声で伝わってくる。
「はい。」
私は電話を切ると、課長を無視して、駅前のタワーマンションに入った。



