「少しずつね……。

それより、何かあったんでしょ。
鈴ちゃんと。」


由夏は俺の顔を覗き込むようにして言う。



「何でもお見通しなんだな。」

俺は彼女に指摘され苦笑する。



「当たり前じゃない。
何年一緒にいたと思ってるの。」


バシッ…………
由夏は俺の背中を叩いた。





「いってぇよ………。

自信がねーんだよ。
この先、あの子を幸せにできる自信が。」

肩を落とし、頭を抱える。




「幸せはね、するものじゃない。
されるものでもない。

一緒に作り上げていくものなんじゃないのかなぁ…?

お互い、その幸せへの
ゴールへ向かって1段ずつさ、
階段を登って。


その道のりは平坦じゃないよね。

大きな壁があったりもする。
それを乗り越えた時とか、
成長を感じた時。

嬉しい事があった時に

小さな幸せが生まれるんじゃないかな。

あはっ♪語りすぎちゃった?」



「由夏…………」


最初から最後まで、
本当に最高な女だな。



「同じ失敗はしちゃいけないよ?

意地でもいいから彼女をしっかり
掴まえてあげて?」




「…………そうだな。」



でも、
その前に鈴ちゃんの気持ちを教えて?




「貴也さん…私達、もう会うことはないわよね。」



「…………ああ。

でも、由夏の夢は叶うまで
影で応援しているから。」


顔を上げ、彼女を見据える。



「ありがとう………あなたと出会えて良かった…」


うっすら涙を浮かべる由夏。


「俺も……………」




こうして、
俺と由夏の関係はきっぱりと

幕を下ろした─────