「ちょっとあっちに行くね…」


私は多実ちゃんにそう言って、
リビングに向かう。


もしかしたら、
これで本当にお別れかもしれない…


その前に、
ちゃんと梅田さんに言わなきゃいけない事がある。





携帯を握りしめながら
ソファーに座り、深呼吸をして

震える手で通話ボタンを押した。


「…………はい。」




「鈴…悪…い………。」

その掠れた声に震えが混じる。


梅田さん………泣いてるの?


「傷つけて…ばっかだな…俺…」


梅田さん…私の事でそんなに

苦しまないで…?





「梅田さん…ごめんなさい…
私の…せいで…」


また目が熱くなって━━━…


喉が詰まるような感覚で、
言葉がうまく出ない。



「鈴の……せいじゃない………
俺が…悪いんだから………」



好きな人を苦しめてるのは、私。

「違…うよ…」

上手く言葉にできない分
私は懸命に頭を左右に振った。



「鈴…もう少し…時間…くれないか?」


さっきより聞き取りづらくなった
梅田さんの小さな声。



この言葉の意味も分からなくて。


「え?」

私は聞き返した。




次の瞬間。

聞こえてきたのは

ツーツーツー

嫌なくらい耳に残る、
電話が切れた時の音。




私は急いで寝室へと戻った。