僕は元々海兵でした。海賊を取締り、成敗するのが仕事です。
しかし今の僕は海軍には戻れません。ある重大な任務を抱えているのです。
それは、今潜入しようとしているこの「Triple Alley号」一味を内部から崩壊に導くという作戦でした。僕は海軍から派遣されてここにいるのです。
海賊は嫌いです。どんなにいい人でも、海賊というだけで大嫌いです。
両親は僕が幼い頃に海賊に襲われて死にました。僕は辛うじて生き延び、海軍に保護されて育ちました。だから海軍には御恩があるし、海賊は僕にとって仇以外の何者でもありませんでした。
その海賊団に潜入せよとの命が下ったのはつい先日のことでした。僕の育ての親でもあり上司でもあるマルクル大佐から聞きました。
マルクル大佐は優しい人でしたが、面倒臭いことは嫌いでした。
「……と言う訳でコルーシ、行ってくれるか?」
「あの……こんな大役、僕なんかでいいんでしょうか?僕に務まるとはとても思えませんが…」
「いいんだよ、お前で。お前こそ適役じゃないか。海賊を憎んでいる、その心は誰にも負けない。だろ?」
「そ、それはそうですけど……」
「じゃあいいだろうが。行きなさい」
「は、はい…」
話は半ば強引に決まり、僕は海軍をクビにされたという建前で第二の故郷を旅立ちました。不安はまだまだありますが、こうなった以上はやるしかありません。作戦も何も考えないまま、僕は「Triple Alley号」に乗り込んだのです。