「豹」と話した翌日の夜、マルクル大佐にこのことを報告しました。出し抜けるかもしれないと伝えるとすぐに返事が返ってきました。
「それはよかった!!漸くやつらを滅ぼせるんだな……慎重に事を運べよ。幸運を祈る」
返事を読んで僕は疑問に思いました。総船長1人の投獄で、この海賊団を本当に滅ぼせるのでしょうか。皆散り散りになって逃げていくとでも言うのでしょうか。「虎」が捕まった時のように、寧ろ全員で取り返しにやって来るのでは……。そう思うと少し不安です。
しかし、心配以上の重圧がのし掛かってきました。しくじったら大変なことになってしまいます。プレッシャーを感じ、胃がギュッと縮こまりました。
僕が裏切ったと知れば、皆はどうするのでしょう。僕を追い出すでしょうか。捕まえてどこかに監禁するか……それとも殺されるか。いずれにせよ無事では済まなさそうです。バレる前に逃げ出さなければなりません。

僕はそれと知られないように逃げる準備を始めました。毎晩自分の物を1つ鞄に仕舞い、さりげなく身の回りを整理するようにしました。
考えてみると、もうこの部屋にも2年程いるのです。ここを追い出されるかもしれない今となっては、何だか寂しいです。
それよりも恐ろしかったのはルナとのことです。せっかく付き合う仲までになったのに、もうお別れしなければならないのが惜しくて仕方ありません。ルナ以外の誰も愛さないつもりでいるので、このままでは一生独身になってしまいます。晴れ姿を見せられないのでは、マルクル大佐にも申し訳ないような気がします。
1週間もかけて荷物をまとめたのですが、結局何もしないまま時だけが過ぎていきました。