「ああ、関口さん、お疲れさま。今日は関口さんが最後の一人だったよ」 「え」 絵里は笑った顔のまま、フリーズした。 「でも、さっき、営業の人が戻ってきましたよね」 「いえ、誰もここを通ってないですよ」 「本当に?」 「間違いないですよ」 それじゃあ、さっき見た人は誰だったんだ……。 そういえば見覚えのない顔だったことに気づいて、夏の夜だというのに背筋が寒くなった。 (誰もいない会社、終わり)