「別に、景のためだけにこんな事してるんじゃないよ。俺らだって同じくらい相生のこと心配だし。本当にやってないんなら濡れ衣着せられても黙ってるのは釈然としないじゃん」


まるで心を読んだかのような市河の言葉


一瞬、もしかしたら読まれたかもしれないと考えるが、一年間を同じ教室で過ごす中で、彼がそのようなことをする人ではないと分かっていた


「いいんじゃねぇ?」などという、「やってない」に対する適当な肯定も疑わない



「何でこうなってしまったのか、言いたくないなら言わなくていいけど、でも言ってみたら。ここには生徒会長もいるんだし」



爽馬は言いつつ、鋼のメンタルで仏頂面の相生に「おれだよ」とパッと明るい笑顔を向ける結斗をチラと見る



それに頷いて、咲夜が言った


「この寮では本当に言いたくないことは言わなくていいんだ。でも気が向いたら、本当のことを教えて欲しい。今まで、そう言って溜め込んできたやつほどロクな爆発をしなかったしね」


爽馬から咲夜へ、瞬時にギロリと向けられるゾンビのような目が怖い


それを見たライが、チャプリと音を立てて爽馬の細い身体の後ろに隠れつつ、「オマエ.....イツカ.....コロス.....」とアテレコした



相生は思う


どこか近寄りがたく特別な雰囲気をまとっていた男子寮Bも、自分たちと変わらないただの男子生徒の集まりなのだと


いや全く


その通りなのだ