『でも引っ越すお金なんてな…』

電話の向こうに父親と母親が話している声が聞こえる。話の内容まではわからないが、悪い話ではないような気がする。

『あ、あのね春樹。お父さんが…』

「……!?」

母親の話によると、父親はいま両親が住んでいる一軒家を売り、そのお金を全て俺に譲るという。

しかし、当たり前だがそのお金は引越しのための費用であり、条件はその住み始めた場所に両親も住むということらしい。

そんなこと意味が無いじゃないか。

『馬鹿よね、お父さん』

「え?」

『貴方と宇宙君と暮らしたいために一軒家を売るってことよ』

「……えっ!?」

そんなことするわけないじゃないか。
一軒家だぞ?一軒家を売ってわざわざ新しい部屋に住む?

家に戻ってこいというならまだ分かるが、家を売るというのは意味がわからない