「パパ!『む』ってどう書くの?」
「ん?難しいよね…薄く書いてあげるから何回もなぞってごらん」
平仮名のドリルをしている宇宙。
もうつかみ立ちではなく普通に走ることも喋ることもできる。
成長するにつれて宇宙は美しく育った。
黒いさらさらした髪の毛に茶色い目、似てるところなんて髪の色くらいしかないけど
あの、チンピラ夫婦の子供とは思えないほど純粋ないい子に育ってくれた。
「パパ、今日のご飯は?」
お腹がすいた〜と宇宙は鉛筆を置いてお腹を抱えながら床をゴロゴロと転がった。
「今日はハンバーグだよ」
「ほんと?僕ハンバーグ大好き!」
宇宙は幸せそうな顔をしながら俺の腕にしがみついてくる。
「じゃあこのページ終わったら夜ご飯にしようか」
うん!と大きな声で返事すると宇宙は薄くなぞった『む』という字を一生懸命なぞり始めた。