「有り難いけれど……私が使ったものは私がやるわ」


そう言いながら、女王陛下は流し台で水に漬けていた調理器具を手に取った。それにならって、私も慌てて石鹸を手に取った。


「――あなた、ロゼッタさんじゃないわよね?」


唐突なその質問に、私は石鹸を掴む手を滑らせて、石鹸はそのまま水の溜まったシンクに沈んでいった。


「……仰っている意味が分かりません」


石鹸が沈んでいった水の波紋を見つめながら、私は感情を押し殺した声でそう答えた。女王陛下は、水の中に手を突っ込んで石鹸を引き上げる。

そのまま私に向かって差し出してくるので、咄嗟に右手を突き出した。


「あの子は左利きなの」


濡れた石鹸が私の右手に握らされて、私は思わず口元を引き攣らせた。