「そうだったんだ」


能力を自覚したときの出来事を話し終えると、柚木さんの表情は少しだけ曇っていた。


僕が離れに暮らしていることで、僕の能力を手放しで喜んでくれる大人ばかりではないと、理解してくれたみたいだ。


「家族は、僕の仕事のことも知ってるし、能力のことも理解してくれてる」


僕は静かに付け加えた。


決して投げ出されているわけじゃないと、伝えたかった。


あの能力をみんなの前で見せた後も、家族は同じように僕を愛してくれた。


だけど時折親族たちが集まって来るときは、どうしても好奇の目を向けられることになる。


親族たちから噂が広がり、僕をひと目見てやろうとする輩もいた。


そんな人たちから僕を守るために、家族は僕を離れに住まわせているのだ。


最近ではそれらも少なくなっていたけれど、僕の離れ暮らしはなんとなく続いていた。


母屋にある6畳の自室よりもずっと広いし、自由になれるというメリットが大きかった。


「そっか。潤は今幸せならよかった」


柚木さんは心底ホッとしたようにそう言った。


その笑顔にまた心臓がドクンッと跳ねる。