「それも和男が買ってきた本よ。きっと、後から読むつもりだったのよ。なんて言うんだっけ? 積読?」


若竹さんは小首をかしげてそう聞いてくる。


僕は「そうですね。いつか読むんだからと思って買っておいておいたんでしょうね」と、頷く。


部屋の中には本以外のものはほとんどない。


ベッドと小さなテーブルくらいなものだった。


和男さんはこの部屋で読書ばかりしていたのだろうか。


「積読って袋のままで置いておくもの?」


柚木さんが僕の服の袖を掴んでそう聞いて来た。


「は?」


「袋からは出さないもの?」


「さぁ。人によるんじゃないか?」