「案内するわね」


そう言いすぐに立ち上がって仏間を出て行ってしまう。


その後を追いかけようとする柚木さんを、僕は止めた。


「なんで余計なことするんだよ」


ムッとした表情で柚木さんを見てそう言うと、彼女は軽く肩をすくめ「だって、もっと話をしたそうに見えたから」と、言った。


若竹さんのことを言っているのだろう。


確かに、ここへ来る前に一旦本屋へ立ち寄ったりしたのは、和夫さんの話を誰かにしたいからかもしれないと、薄々気が付いていた。


だけど、ここまできてわざわざ遠回りをする必要なんてない。


さっさと和男さんを呼び出してあげた方が若竹さんも嬉しいだろうに。


文句を言ってやろうと思っていたのに、なかなか仏間から出てこない僕らを呼びに若竹さんが戻ってきてしまった。