本屋で別々にレジがあるなんて珍しいな。


そう思っていたとき、丁度シフト交代の時間だったのか、線の細い女性がやってきてレジ内の男性と会話しはじめた。


女性と言うよりはまだ少女という印象の彼女は、笑うとエクボができる。


超絶美少女というワケではないが、向日葵みたいに人を引き付ける笑顔の子だ。


「なに、レジのアルバイトさんに見とれてんの!」


柚木さんにわき腹をつついてそう言われ、ハッと我に返った。


「ご、ごめんなさい」


慌てて若竹さんへ謝罪すると、若竹さんは楽しそうに笑ってくれた。


「いいのよ。確かに可愛い子だものね」


その言葉にホッと安堵する。


仕事に集中しなければ怒り出す依頼者も時にはいるのだ。


若竹さんは偶然そういう依頼者じゃなかったというだけだ。