そう言われるともう返す言葉がない。


「自分のスマホは?」


「持ってるわけないじゃん。逃亡犯なんだから」


柚木さんはさも当然のようにそう言う。


「さ、どうする? 私を仕事に連れて行くか、クラス全員に潤の正体をバラすか」


なんて2択なんだ。


柚木さんの非道な行動に胃がギリリと痛むのを感じた。


僕に優しい選択肢は用意されていないじゃないか。


「わかったよ。服と帽子を貸すから、スマホを返せ」


そう言うと、柚木さんはしたり顔で笑ったのだった。