でも、これだけは言える。


柚木さんはトラブルメーカーだ。


きっと仕事においても。


「とにかく無理なものは無理だから」


僕はそう言って柚木さんの横を通り過ぎて出口へと向かう。


「あっそ、じゃあ言っちゃうけど、いいんだね?」


靴を履きかけた僕は柚木さんの言葉に動きを止めた。


見ると不適な笑顔を浮かべて僕のスマホを持っている。


いつの間に取られたんだろうか。


ハッとしてズボンの後ろポケットを探ってみるが、そこにあるはずのスマホがなかった。


「男の人でも鞄を持ち歩かないと、簡単に盗まれちゃうんだぞ」


柚木さんはいたずらっ子のような笑顔を浮かべ、僕のスマホを突き付けて来た。


「泥棒だぞ」


「別にいいよ。だって人殺しだし」