なんでって、こいつは自分の立場を全く理解していないのか。


「柚木さんは殺人者。外にでることはできない」


キッパリとそう言ってやると、柚木さんは子供のように頬を膨らませた。


そんな顔をされたって無理はものは無理だ。


柚木さんだって捕まるのは嫌だろう。


僕はふくれっ面のままの柚木さんを置いて部屋を出た、その時だった。


後ろから服を掴まれて僕は立ち止まった。


振り返ると柚木さんが置いて行かれまいと必死になって僕を見上げているのが見えた。


「私も行く」


「だから、無理だって」


そう言うと柚木さんは不敵な笑顔を浮かべて勢いよく立ち上がった。


そして僕の隣にピンッと背筋を伸ばして立つ。


僕とさして変わらない身長の彼女はニマニマと嫌らしい笑顔を浮かべて僕にこう言った。


「貸して、服」