その時だった。


微かにだが、家の中から物音が聞こえて来たのだ。


「誰かいますか!」


僕は再び声を上げて玄関ドアに手をかけた。


横開きのそれをスライドさせてみると、ガラガラと音を立てながらドアが開いた。


その瞬間、すえたような臭いが鼻を刺激する。


玄関には履き古した紳士物の靴が数足と、比較的新しい女性物の靴が一足並んでいた。


「柚木さん、いるんだろ!?」


僕は確信してそう叫んだ。


物音は家の奥から聞こえて来る。


返事はないけれど、ここで待っている暇もない。


そう判断した僕はすぐに家に上がり込んだ。