翔平が準備してくれたアプリを確認しながら、僕は再び自転車を走らせていた。


太陽はどんどん沈んで行き、山の麓は他よりも暗く見える。


暗がりの中にいたら、嫌でも気持ちが沈んでしまい、悪い方悪い方へと考えが進んで行く。


今頃行ったところでもう遅いかもしれない。


柚木さんはもしかしたら、お姉さんと2人で……。


そんな考えを振り払うように自転車をこぐ。


ポツポツと街灯がつき始めたころ、僕はようやくその家に辿りついていた。


小さな一軒家には《橋本》という木の表札がかけられていたが、それも古くなっていて辛うじて読めるような状態だった。


家の周辺にある草木は生え放題で、手入れなんて何年もされていないように感じられた。


玄関前にある飛び石は砕けてボロボロになっている。