息を切らしながら離れの窓を開けて部屋に入る。


「柚木さん?」


声をかけながら僕は柚木さんの部屋のふすまを開けた。


中はちゃんと布団がたたまれている状態で、誰の姿もない。


昼間でもよく1人で出歩いているから心配する必要はないかもしれない。


また母親のお見舞いに行っているのかもしれないし。


そう思っていても、嫌な胸騒ぎを感じる。


主のいない部屋に足を踏み入れた瞬間、違和感が過った。


よく部屋の中を見回してみて、ハッと息を飲んだ。


柚木さんの荷物がないのだ。


衣類は僕のものを貸していたけれど、さすがにそれだけじゃ生活できない。


柚木さんは1人で買い物へ出かけた時に、自分に必要なものは購入していた様子だった。


けれど、それが何もかもなくなっているのだ。