「なぁ、頼む」


翔平のそんな言葉で我に返った。


目の前には今にも泣きだしてしまいそうな翔平が立っている。


「アツコもあの小屋にいたんだろ? それってもしかして……」


「うん。わかってる」


僕は頷いた。


同時に、記憶が蘇りかけている状態で柚木さんを1人にしてしまったことに気が付いた。


「ごめん。今日はもう帰る」


僕は早口にそう言うと、鞄も持たずにそのまま家へ向けて駆け出していたのだった。