「そっか……」


これがもっと幼い頃なら、お姉さんの命は今頃どうなっていたか分からないと言う事だ。


一瞬、周囲から好奇の目で見られていた時期のことを思い出し、強い身震いが走った。


ネグレクトとはかけ離れているけれど、幼い僕はあのときどうすればいいのかもわからなくて、ただ単純に恐ろしかった。


「でも、そう言うのってずっと黙ってはおけなよね。友達の親が気が付くし、私だって気が付いてたし」


「お姉さんは施設に?」


そう訊ねると柚木さんは「1度はね」と、返事をした。


食事を与えてくれない父親でも、たった1人の父親だ。


普段は優しく、仕事熱心な父親を1人にさせたくないと思い、家に戻って来たそうだ。


「高校生になればバイトをして自分のご飯代くらいは稼げるしね。でも……あんな風にガリガリに痩せてたなんて……」