「柚木さんのお姉さんは、両親が離婚してから別々に暮らしてたんだよな?」


「うん。だけど、家はそんなに離れてないの。姉妹で行き来することはできた」


柚木さんはようやく落ち着いてきたのか、額に浮かんだ汗をぬぐってそう返事をした。


呼吸は落ち着いている。


「それで、あの山の麓でお姉さんを見つけたけれど……お姉さん、ガリガリに痩せてたの」


「え……?」


柚木さんの表情が曇る。


「お姉さんね、お父さんに引き取られてからあまり食べてないみたいで……。時々こっそり会うたびに痩せて行ってたの」


「それって……」


「ネグレクトっていうのかな。育児放棄。でも、両親が離婚した時に私たちは中学生だったから、お姉さんは友達とかを頼ってご飯を食べさせてもらって、どうにかやって来れてたみたい」