柚木さんは近くの自販機へ向かうため立ち上がった時、山の方から人の足音が聞こえてきて振り向いた。


木々がうっそうと生い茂っていて、1メートル向こうは暗闇だ。


「メイコ……?」


柚木さんがそっと近づいて声をかける。


相手が三浦さんならいいけれど、野生動物である可能性もある。


僕は柚木さんの一歩前に出て様子を伺った。


「三浦さんですか?」


返事はない。


「翔平はいないよ」


柚木さんが後ろからそう言うと、再びガサガサと草木が揺れた。