そんな僕を見て翔平はいぶかしげな表情を浮かべ、電信柱へと近づいていく。


「あ、ちょっと三浦さんの家はそっちであってるのかな?」


僕は慌てて翔平の後を追いかけてそう訊ねた。


しかし翔平は返事をせずに電信柱の影を覗き込む。


一瞬の沈黙が訪れた後、翔平の顔が見る見る内に驚きへと変化して行った。


「アツコ……?」


とても小さな声でそう呟く。


「え……へへへ」


名前まで呼ばれてしまったらこれ以上隠し通す事はできない。


電信柱の影から、柚木さんが苦笑いを浮かべて出て来た。


深く帽子を被っているものの、毎日顔を突き合わせていたクラスメートまで騙す事はできない。


「嘘だろ。なんでこんなところにアツコが……」


翔平は驚きと混乱の声を上げている。