蘇らせ屋のボクとヒトゴロシのキミ

僕は何もしていない。


彼女を家に呼んでお茶を出しただけだ。


それなのに、柚木さんは晴れやかだった。


「じゃあ、私はもう行くね。つまらない話きかせてごめんね」


あまりにもあっさりそう言って部屋を出て行くものだから思わず追いかけてしまいそうになる。


腰を浮かせかけた僕は思いとどまり、そのまま座り直した。


ここで呼び止めたところで僕にできることなんてなにもない。


警察に行けとか、警察について行ってあげるとか、できるのはその程度のことなんだ。


僕はグッと拳を握りしめてそれを見つめた。


柚木さんが出口へと向かう音が聞こえて来る。


ギッギッときしむ廊下の音は途中で止まり、窓を開閉する音が聞こえて来る。


ここは離れで玄関らしい玄関はないから、廊下の窓から外へ出るのだ。


窓の開閉音がした後、砂利を踏む音が聞こえて来る。


僕はその音に全神経を集中させていた。


足音は徐々に遠ざかり、すぐに聞こえなくなった。


完全に敷地から出て行ったのだ。