「私、お母さんと2人暮らしなの。そのお母さんは入院してる。だから私が家にいないって知っている人はほとんどいない」


その返答に僕は目を見開いた。


柚木さんが母子家庭だなんて今の今まで知らなかった。


思えば、僕は柚木さんの家族について話題に出したことはないかもしれない。


僕の身の上話はしたことがあったのに。


そう思うと、急に柚木さんの存在が遠のいたように感じられた。


「時々ここを出てお母さんのお見舞いに行って、ついでに買い物をして帰って来るの」


柚木さんの視線はテーブルの上の流しそうめんの機械に向いている。


僕もそれにつられて機械に視線を落とした。


お見舞いに行っているだなんて知らなかった僕は、つい声を荒げてしまったことを公開していた。


けれど、どう謝っていいのかわからない。