数日後、教室内では少しずつ変化が起こりはじめていた。


柚木さんのことは相変わらず話題に上がるけれど、悪い噂を立てる生徒はいなくなっていた。


あの日、翔平が声を上げて発言してくれたおかげだった。


それともう1つ。


どういうわけか、翔平と僕はよく会話をするようになっていた。


普段違うグループだったし、趣味も違うし、人気度だって全く違う僕たちだけど、先に話しかけてくるようになったのは翔平の方だった。


「なぁ、お前はどう思う?」


文庫本を読んでいた僕に突然そう声をかけてきたのだ。


僕はなにが『どう思う』のかわからなかったが、とりあえず文庫本から視線を離して翔平を見た。


「あつこのこと」


続けてそう言われて、あぁ。


と、内心納得した。