前回の暗い表情が嘘のようだ。


拓也さんには申し訳ないけれど、真理さんの心は完全に山本さんへと向かっている。


僕は複雑な心境の中、頷いた。


手の中の骨は随分と熱くなっていて、すぐにでも蘇りたいのだという気持ちが伝わって来た。


《それでは、こちらの世界へどうぞ》


僕は真理さんへそう言い、そっと目を開けた。


右手に握った骨はすでに少し大きくなり始めている。


慌ててソファから立ち上がり、開いたスペースに骨を置く。


原田さんと山本さんが、その様子を固唾を飲んで見守っている。


「……行こう」


骨が真理さんの形になる前に、僕は柚木さんへ向けてそう言った。


柚木さんはなにか言いたそうな表情をしていたけれど、僕に続いて部屋を出て来た。