あの写真の真理さんによく合う声だった。


《どうしてですか?》


《私にそんな権利はありません》


《え……?》


僕は暗闇の中手を伸ばす。


どこかにいるはずの真理さんを探して。


《あの人に伝えてください。私はあなたには相応しくない女だったと》


《それってどういう意味ですか?》


《そのままの意味です》


声がどんどん遠ざかる。


まずい。


真理さんは蘇らないつもりだ。


交渉は決別し、仕事は失敗に終わる。


《ちょっと、待って!》


僕の声に返事をしてくれる声は、もうどこにもいなかったのだった。