「これが真理です」


骨壺を開けた真理さんの母親が、そう言って腰を下ろした。


その頬には一筋の涙が流れている。


僕は骨壺へ向けて手を合わせ、それからそっと蓋を持ち上げた。


中を確認した瞬間、骨壺の中に入っている量がいつもより少ない気がしてとまどった。


真理さんは小柄な女性だったんだろうか。


「骨の一部は僕の家に」


僕の違和感に気が付いたのか、拓也さんがそう言った。


「そうだったんですか」


最近では小さな骨壺も数多く販売されていて、わけて入れる人もいるらしい。


「骨を拝借します」


僕はそう言い、小さな骨を崩さないよう指先でつまんで骨壺から取り出した。


右手で優しく包み込み、目を閉じる。


意識を死者へと集中させる。