人は強いショックを受けるとその時の記憶が消えてしまうときがあるという。


それは自分自身を守るためのもので、思い出そうとしても思い出せないのだそうだ。


「……そうなのかも」


柚木さんの返事に僕はゴクリと唾を飲みこんだ。


嫌な予感が胸を渦巻き始める。


記憶にない小屋。


記憶にない死体。


「その……聞きにくいんだけどさ」


「なに? 思い出すためならなんで聞いて?」


「柚木さんが見た死体って……性別は?」


「男だったよ。2人いた」


柚木さんの答えは爆弾となって投下された。