「自転車?」


確かに周囲に自転車はない。


あるのは授業員用の駐車スペースに止めてある数台の車だけだった。


それを確認したら、僕でもピンときた。


「そうか、あの子が車に乗ってるってことか。そして和男さんをひき逃げした犯人っていうことになるんだ!」


思い切ってそう言ったのに、柚木さんは冷めた表情を浮かべて僕を見ている。


「なに言ってるの? 徒歩かもしれないじゃん」


「あ……」


そういえばその可能性もあったんだ。


途端に恥ずかしくなり、俯く。


「でも、それじゃああの子は犯人じゃないだろ」


「そうだね。あの子は犯人じゃない。免許もまだ持ってないかもしれないんだしね」


「だったらここへ来る意味なんてないだろ」


僕がそう言った時、従業員駐車場に1台の黒い車が入って来た。