柚木さんはそう言い、自分の体を両手で抱きしめた。


本気で怯えているし、こんな嘘をつく理由もない。


僕は唸り声をあげて考え込んだ。


「それは悪い夢とかじゃなくて?」


「そんなわけないじゃん!」


柚木さんの声が震えている。


そうだよな。


さすがに夢と現実の区別はつくだろうし、ただの夢ならこんな相談してこない。


「もしかしてさ、ショックを受けて記憶が消えたってこと?」


ふと思いついた憶測をそのまま口に出した。