「人を殺したって、どういうことなんだよ」


僕がそう訊ねると、柚木さんは黙り込んでお茶をひと口飲んだ。


そして真剣な表情で顔を上げる。


その表情はひどく怯えていて僕はまた困惑してしまった。


「覚えてないの」


とても小さな声で柚木さんはそう言った。


「覚えてない?」


「そう。私、気が付いたら小屋の中にいて死体が転がってて……」


「ちょっと待って」


僕は慌てて柚木さんの話を止めた。


「死体が? どこに?」


「小屋だよ」


「小屋って、どこの?」


「山奥。でもね、その小屋も死体も見覚えがなくて、怖くて逃げて来たの」