☆☆☆

再び通された仏間には、もう誰の姿もなかった。


だけど座布団には凹みがあり、煎餅のカスがテーブルに落ちていた。


間違いなくここに和男さんがいたという証だ。


「どうぞ」


若竹さんが2人分のお茶を用意してくれたので、僕らはテーブルの前に座った。


「今日は本当にありがとう。また和男と会えるなんて思っていなかったから、嬉しかった」


疲れた顔で若竹さんはそう言った。


「いえ……」


僕は小さな声でそう答えるのがやっとだった。


死者と会って会話することですべての人が報われるわけじゃない。


それは僕自身何度も経験してきたことだった。