懐かしいボロアパートに戻ってくると、部屋はサチが出かけた時のままの状態だった。
「あー、やっぱりお野菜、いたんじゃった」
小さい冷蔵庫を覗きながら、サチは残念そうに言った。
「しかたないよ。一応、新婚旅行に行ってたんだからさ」
コータが言うと、サチは嬉しそうに微笑んだ。それから、少し神妙な顔つきになった。
「コータ、あねの。やっぱり、結婚する前にちゃんと話しておくべきだったよね」
サチに手招きされるまま、コータはサチの向かいに座った。
「あのね。あたし、ちゃんとコータに話すよ。あたしの家族のこと。これから、コータにどんな迷惑をかけるかわからないから」
サチは言うと、身持ちの悪い母親と、女癖の悪い母親の情夫のこと、そして、確かに家の周りではサチが母の情夫と肉体関係があるという話がまことしやかに囁かれていること、それは、サチのせいではなく、母親の情夫が言いふらしているからだということ。それから、キャバクラに勤めているときも、体に触られるのが嫌で、店長に相談したら店長の愛人になるならと言う条件でお触りタイムにお店に出なくてよくしてもらったが、実際に店長に関係を迫られ、店を逃げ出したこと、店長を拒んだためにボコボコに殴られ、命からがら逃げだし、そのまま行く当てもなく電車を乗り継ぎ、終電のついた駅から行く当てもなく歩いて、座り込んでいたところをコータに拾われたのだと、サチは全てを説明した。
「あの人たち、コータのお父さんがお金持ちだってわかったら、何をしてくるかわからない」
涙ぐむサチに、コータはサチをしっかりと抱きしめた。
「サチ、俺にはおやじはいない。前にも言っただろう、俺の戸籍には父親の名前、入ってないんだ。だから、何にも心配しなくていい」
サチはコータの胸に顔を埋め、しばらくの間泣き続けた。
航によるコータ拉致事件が嘘だったかのように、コータとサチの毎日は、今までと変わりない物に戻っていった。
スーパーだけは、一週間近くにわたる無断欠勤と、父親と名乗る人間から辞めるという失礼な連絡があったという事で、店長が機嫌を損ねてしまい、コータの復職を認めないと言い張り、コータは仕方なく新しい仕事を探すことにした。
しかし、サチとコータが結婚したとたん、スーパーをクビになったと知った大将が歩いて通うのは難しいが、バスか自転車でなら通える距離にある隣町のライバルスーパーを紹介してくれた。
コータは航に買ってもらった高級スーツではなく、もともと持っていたどこから見てもリクルートスーツという安物のスーツに身を包み、大将からの紹介状を持って面接に行くと、ライバル店からの転職ということもあり、隣町のスーパーはコータをアルバイトではなく、契約社員として雇ってくれることになった。
契約社員の勤務時間と拘束時間は大将の店の勤務時間とも被ることもあり、コータは悩んだものの、大将から『結婚したんだから、もっとしっかり稼がないとな』と言われ、大将の店は繁忙期とシフトが合う日だけの応援ということにし、スーパーの契約社員として働くことになった。
「あー、やっぱりお野菜、いたんじゃった」
小さい冷蔵庫を覗きながら、サチは残念そうに言った。
「しかたないよ。一応、新婚旅行に行ってたんだからさ」
コータが言うと、サチは嬉しそうに微笑んだ。それから、少し神妙な顔つきになった。
「コータ、あねの。やっぱり、結婚する前にちゃんと話しておくべきだったよね」
サチに手招きされるまま、コータはサチの向かいに座った。
「あのね。あたし、ちゃんとコータに話すよ。あたしの家族のこと。これから、コータにどんな迷惑をかけるかわからないから」
サチは言うと、身持ちの悪い母親と、女癖の悪い母親の情夫のこと、そして、確かに家の周りではサチが母の情夫と肉体関係があるという話がまことしやかに囁かれていること、それは、サチのせいではなく、母親の情夫が言いふらしているからだということ。それから、キャバクラに勤めているときも、体に触られるのが嫌で、店長に相談したら店長の愛人になるならと言う条件でお触りタイムにお店に出なくてよくしてもらったが、実際に店長に関係を迫られ、店を逃げ出したこと、店長を拒んだためにボコボコに殴られ、命からがら逃げだし、そのまま行く当てもなく電車を乗り継ぎ、終電のついた駅から行く当てもなく歩いて、座り込んでいたところをコータに拾われたのだと、サチは全てを説明した。
「あの人たち、コータのお父さんがお金持ちだってわかったら、何をしてくるかわからない」
涙ぐむサチに、コータはサチをしっかりと抱きしめた。
「サチ、俺にはおやじはいない。前にも言っただろう、俺の戸籍には父親の名前、入ってないんだ。だから、何にも心配しなくていい」
サチはコータの胸に顔を埋め、しばらくの間泣き続けた。
航によるコータ拉致事件が嘘だったかのように、コータとサチの毎日は、今までと変わりない物に戻っていった。
スーパーだけは、一週間近くにわたる無断欠勤と、父親と名乗る人間から辞めるという失礼な連絡があったという事で、店長が機嫌を損ねてしまい、コータの復職を認めないと言い張り、コータは仕方なく新しい仕事を探すことにした。
しかし、サチとコータが結婚したとたん、スーパーをクビになったと知った大将が歩いて通うのは難しいが、バスか自転車でなら通える距離にある隣町のライバルスーパーを紹介してくれた。
コータは航に買ってもらった高級スーツではなく、もともと持っていたどこから見てもリクルートスーツという安物のスーツに身を包み、大将からの紹介状を持って面接に行くと、ライバル店からの転職ということもあり、隣町のスーパーはコータをアルバイトではなく、契約社員として雇ってくれることになった。
契約社員の勤務時間と拘束時間は大将の店の勤務時間とも被ることもあり、コータは悩んだものの、大将から『結婚したんだから、もっとしっかり稼がないとな』と言われ、大将の店は繁忙期とシフトが合う日だけの応援ということにし、スーパーの契約社員として働くことになった。



