品川駅で電車を降りたサチと俺は、夕方までチェックインできないホテルをにらみながら、高輪口の階段を下りた。
俺たちの住んでいた地元とは雰囲気の違う、誰もがわき目も降らずにそれぞれが描いたまっすぐな線の上を走るようにひしめき合いながら歩いていた。
俺とサチは宿泊費もかかることだしと、高輪口を出て田町方向に進んだ雑居ビルの二階にあるインド料理屋に入った。
当然、俺もサチもインド料理なんて食べるのは初めてだし、何を頼んでいいかもわからないし、正直、言葉が通じるのかもわからなかったけれど、結婚したわけだし、何かいつもと違うことをしたいねと言うのが、二人の共通の意見で、二人とも食べたことのないインド料理を二人して初体験することにした。
恰幅の良いインド人の店員は、多少の訛りはあるものの、流暢な日本語で俺たちを窓側の席に案内してくれた。
本当はホテルの部屋で交換しようと思っていた結婚指輪だったが、ランチタイムとディナーの間で他にお客がいないこともあり、俺は早く二人でお揃いの指輪がしたくて、カバンから指輪を取り出した。
サチも同じ気持ちだったらしく、嬉しそうに頷いて見せた。
俺は指輪のケースを開けると、サチの手を取り指輪をゆっくりとサチの左手の薬指にはめた。そして、サチが俺の左手の薬指に俺の指輪をはめてくれた。
瞬間、これで誰も俺たちを引き離すことはできないんだという強い感情が沸き上がり、俺とサチはキラキラと輝く指輪をはめた手を互いに求め合うようにしてぎゅっと握りしめた。
そんな俺たちに気付いた店員が『Just Married?』と英語で聞いてきた。
なんとなく意味が通じた俺とサチは笑顔で何度も頷いた。すると、店員は『おめでとうございます』と言いながら俺とサチの肩を何回か祝福するように叩いた。
誰にも祝福されないと思っていた俺とサチは、優しい店員のおかげで思わず笑顔になった。そんな俺たちのところに店員が頼んでもいないドリンクを二つ運んできた。
「えっ、頼んでない・・・・・・」
懐具合の不安な俺が呟くと、店員は笑顔で俺たちの前にグラスを置いた。
「お祝いです」
驚いて店員を見上げると、厨房の中にいるスタッフ達までが手を動かしながら俺たちの方を祝福する温かい眼差しで見つめていた。
「あ、ありがとうございます」
俺がお礼を言うと、サチは立ち上がって店員にお礼を言った後、厨房のスタッフにもお礼を言いに行った。
そんな幸せそうなサチの姿を見ていると、俺は結婚をしたという実感とともに、嬉しさで目が潤んできた。
今俺は、母さんが望んでも手にすることのできなかった幸せを手にしたんだと。母さんに報告したいと。明日、母さんに報告に行こうと、俺は心の中で決めた。
サチが席に戻り、俺たちはまだ何もオーダーしてないことに気付いた。
「インド料理初めてで、辛いのはにがてなんです」
サチが説明すると、店員は頷きながら『これ、とってもマイルドね』とバターチキンというカレーを指さした。
俺とサチはバターチキンのカレーを二つと、ナーン、それにサフランライスを頼んだ。
お店の好意で貰ったオレンジ色のドリンクは、俺が生まれて初めて飲むドリンクだったが、俺が知っている中で一番美味しいドリンクだった。
「美味しい!」
向かいでサチが幸せそうに言うと、嬉しそうに店員が『マンゴーラッシーです』と言った。
初めて聞く名前のドリンクだったけれど、俺とサチにはどんな高級なシャンパンよりもおいしく、幸せな味がした。
やがてカレーと巨大なナーン、真っ黄色なサフランライスが運ばれてきた。
俺とサチは恐る恐るカレーに口をつけたが、それは甘く少しスパイシーで、心の底から温まるような幸せな味がした。
優しい店員に教えられるまま、俺とサチはナーンをちぎってはカレーにつけて口に運んだ。それから、サフランライスの上にカレーをかけ、スプーンですくって食べ、俺たちは再び舌鼓を打った。
「インド料理って、美味しいんだね」
幸せそうにサチが言い、俺は頷いた。
「また、ここに来ような」
俺が言うと、サチは嬉しそうに微笑んだ。
俺たちの住んでいた地元とは雰囲気の違う、誰もがわき目も降らずにそれぞれが描いたまっすぐな線の上を走るようにひしめき合いながら歩いていた。
俺とサチは宿泊費もかかることだしと、高輪口を出て田町方向に進んだ雑居ビルの二階にあるインド料理屋に入った。
当然、俺もサチもインド料理なんて食べるのは初めてだし、何を頼んでいいかもわからないし、正直、言葉が通じるのかもわからなかったけれど、結婚したわけだし、何かいつもと違うことをしたいねと言うのが、二人の共通の意見で、二人とも食べたことのないインド料理を二人して初体験することにした。
恰幅の良いインド人の店員は、多少の訛りはあるものの、流暢な日本語で俺たちを窓側の席に案内してくれた。
本当はホテルの部屋で交換しようと思っていた結婚指輪だったが、ランチタイムとディナーの間で他にお客がいないこともあり、俺は早く二人でお揃いの指輪がしたくて、カバンから指輪を取り出した。
サチも同じ気持ちだったらしく、嬉しそうに頷いて見せた。
俺は指輪のケースを開けると、サチの手を取り指輪をゆっくりとサチの左手の薬指にはめた。そして、サチが俺の左手の薬指に俺の指輪をはめてくれた。
瞬間、これで誰も俺たちを引き離すことはできないんだという強い感情が沸き上がり、俺とサチはキラキラと輝く指輪をはめた手を互いに求め合うようにしてぎゅっと握りしめた。
そんな俺たちに気付いた店員が『Just Married?』と英語で聞いてきた。
なんとなく意味が通じた俺とサチは笑顔で何度も頷いた。すると、店員は『おめでとうございます』と言いながら俺とサチの肩を何回か祝福するように叩いた。
誰にも祝福されないと思っていた俺とサチは、優しい店員のおかげで思わず笑顔になった。そんな俺たちのところに店員が頼んでもいないドリンクを二つ運んできた。
「えっ、頼んでない・・・・・・」
懐具合の不安な俺が呟くと、店員は笑顔で俺たちの前にグラスを置いた。
「お祝いです」
驚いて店員を見上げると、厨房の中にいるスタッフ達までが手を動かしながら俺たちの方を祝福する温かい眼差しで見つめていた。
「あ、ありがとうございます」
俺がお礼を言うと、サチは立ち上がって店員にお礼を言った後、厨房のスタッフにもお礼を言いに行った。
そんな幸せそうなサチの姿を見ていると、俺は結婚をしたという実感とともに、嬉しさで目が潤んできた。
今俺は、母さんが望んでも手にすることのできなかった幸せを手にしたんだと。母さんに報告したいと。明日、母さんに報告に行こうと、俺は心の中で決めた。
サチが席に戻り、俺たちはまだ何もオーダーしてないことに気付いた。
「インド料理初めてで、辛いのはにがてなんです」
サチが説明すると、店員は頷きながら『これ、とってもマイルドね』とバターチキンというカレーを指さした。
俺とサチはバターチキンのカレーを二つと、ナーン、それにサフランライスを頼んだ。
お店の好意で貰ったオレンジ色のドリンクは、俺が生まれて初めて飲むドリンクだったが、俺が知っている中で一番美味しいドリンクだった。
「美味しい!」
向かいでサチが幸せそうに言うと、嬉しそうに店員が『マンゴーラッシーです』と言った。
初めて聞く名前のドリンクだったけれど、俺とサチにはどんな高級なシャンパンよりもおいしく、幸せな味がした。
やがてカレーと巨大なナーン、真っ黄色なサフランライスが運ばれてきた。
俺とサチは恐る恐るカレーに口をつけたが、それは甘く少しスパイシーで、心の底から温まるような幸せな味がした。
優しい店員に教えられるまま、俺とサチはナーンをちぎってはカレーにつけて口に運んだ。それから、サフランライスの上にカレーをかけ、スプーンですくって食べ、俺たちは再び舌鼓を打った。
「インド料理って、美味しいんだね」
幸せそうにサチが言い、俺は頷いた。
「また、ここに来ような」
俺が言うと、サチは嬉しそうに微笑んだ。



