無事に結婚指輪を手に入れたものの、俺はどこで、どのタイミングでサチと指輪の交換をしていいのか分からず、サチと手をつないだまま再び駅へと戻っていた。
正直、駅に戻ったとしても行く当てはない。
俺の部屋にもどれば、あの男に連れ戻されるのはほぼ確実だろうし、それにあの男の言った通りスーパーの仕事を辞めることになっていたら、昼だけの大将の店の仕事だけではあのアパートの家賃だって払うことが出来ない。
せっかく、サチと結婚することが出来たのに、人生で一番幸せな時間のはずなのに、俺はこれからどうやってサチを養っていったらいいのかが不安で、その場に膝をついてしまいそうだった。
「コータ、指輪なんだけど・・・・・・」
サチの言葉に顔を上げた俺は、温泉旅館の広告に目を止めた。
「サチ、温泉に入って、ハネムーンをやり直そう」
俺の言葉に、サチは驚いたようだった。
「でも、指輪も高かったし・・・・・・」
サチの心配はもっともだったが、俺だってサチを幸せなお嫁さんにしてあげたい。せっかくのハネムーンがあんなひどいペンションでの一晩で終わっていいわけがない。
「あそこに、観光相談所があるよ」
俺は言うと、戸惑うサチの手を引いて、観光相談所に向かった。
俺の安くて、ロマンチックで、温泉に入れて、一泊二食付きなホテルか旅館という、無茶苦茶な希望に、観光局の人は顔を引きつらせていたが、それでもコンピューターに何やらデータをパチパチ入力していき、困ったように頭をかいた。
「正直、観光局でご案内できる場所には、ご希望のような夢の宿はありません。でも、パソコンを使えば格安の宿と宿泊プランを提供している会社のプランを利用できます」
俺は何を言われているのか分からず、ぽかんとした顔をして観光案内書のおじさんの言葉に耳を傾けていた。
「スマホでも、予約ができますよ」
おじさんの言葉がやっと理解でき、俺はカバンの底にしまい込んであったあの男から貰ったスマホを取り出した。
「あの、これでもできますか?」
俺の差し出すスマホに、おじさんは目を丸くした。
「これなら、小型のパソコンそのものですよ」
「すいません、やり方を教えていただけますか?」
サチのお願いの視線に負け、おじさんは『ちょっとお借りしますよ』と言って俺のスマホをサクサク操作し、俺の前に画面を表示した。
「これが、ご希望に合ったプランです」
画面に表示されたのは、都心の高級ホテルの宿泊プランだった。
「温泉はありませんが、高層階でロマンチックですし、午後六時以降のチェックインであれば、当日割引ということもあり、ご希望の予算でお泊り戴けます」
「そ、それでお願いします」
俺は言うと頭を下げた。
「じゃあ、予約しますよ。あ、会員じゃないんですよね、そうしたら、ここに名前を入れて、会員登録して、それから、こっちに宿泊者情報を入力してください」
俺はおじさんに言われるまま、個人情報を入力し、宿の予約を入れた。
「あとは、この予約番号をメモに書いておきますから、ホテルに着いたら、この予約番号を言って、お名前を伝えれば大丈夫ですよ」
親切なおじさんに助けられ、俺とサチはその日の宿を手に入れた。
「あ、食事は明日の朝食しかついていなので、忘れないように」
「ありがとうございます」
俺とサチはお礼を言うとスマホの電源を切り、再び券売機のところに戻った。
目的のホテルがある場所までは電車で一本だった。
俺とサチは切符を買い、目的地を目指した。もちろん、夜の六時まではチェックインできないということだったが、都心に戻れば、時間をつぶせる場所は沢山ある。それに、注意されたとおり、夕食はついていないから、どこかで夕食を食べる必要がある。
宿泊先のホテルは、俺だって名前を知っているくらいの老舗の有名ホテルだ。少なくとも、俺とサチの金銭感覚で味わえるようなレストランがあるとは思えない。
サチと俺は電車に乗ると、都心に向けて出発した。
☆☆☆
正直、駅に戻ったとしても行く当てはない。
俺の部屋にもどれば、あの男に連れ戻されるのはほぼ確実だろうし、それにあの男の言った通りスーパーの仕事を辞めることになっていたら、昼だけの大将の店の仕事だけではあのアパートの家賃だって払うことが出来ない。
せっかく、サチと結婚することが出来たのに、人生で一番幸せな時間のはずなのに、俺はこれからどうやってサチを養っていったらいいのかが不安で、その場に膝をついてしまいそうだった。
「コータ、指輪なんだけど・・・・・・」
サチの言葉に顔を上げた俺は、温泉旅館の広告に目を止めた。
「サチ、温泉に入って、ハネムーンをやり直そう」
俺の言葉に、サチは驚いたようだった。
「でも、指輪も高かったし・・・・・・」
サチの心配はもっともだったが、俺だってサチを幸せなお嫁さんにしてあげたい。せっかくのハネムーンがあんなひどいペンションでの一晩で終わっていいわけがない。
「あそこに、観光相談所があるよ」
俺は言うと、戸惑うサチの手を引いて、観光相談所に向かった。
俺の安くて、ロマンチックで、温泉に入れて、一泊二食付きなホテルか旅館という、無茶苦茶な希望に、観光局の人は顔を引きつらせていたが、それでもコンピューターに何やらデータをパチパチ入力していき、困ったように頭をかいた。
「正直、観光局でご案内できる場所には、ご希望のような夢の宿はありません。でも、パソコンを使えば格安の宿と宿泊プランを提供している会社のプランを利用できます」
俺は何を言われているのか分からず、ぽかんとした顔をして観光案内書のおじさんの言葉に耳を傾けていた。
「スマホでも、予約ができますよ」
おじさんの言葉がやっと理解でき、俺はカバンの底にしまい込んであったあの男から貰ったスマホを取り出した。
「あの、これでもできますか?」
俺の差し出すスマホに、おじさんは目を丸くした。
「これなら、小型のパソコンそのものですよ」
「すいません、やり方を教えていただけますか?」
サチのお願いの視線に負け、おじさんは『ちょっとお借りしますよ』と言って俺のスマホをサクサク操作し、俺の前に画面を表示した。
「これが、ご希望に合ったプランです」
画面に表示されたのは、都心の高級ホテルの宿泊プランだった。
「温泉はありませんが、高層階でロマンチックですし、午後六時以降のチェックインであれば、当日割引ということもあり、ご希望の予算でお泊り戴けます」
「そ、それでお願いします」
俺は言うと頭を下げた。
「じゃあ、予約しますよ。あ、会員じゃないんですよね、そうしたら、ここに名前を入れて、会員登録して、それから、こっちに宿泊者情報を入力してください」
俺はおじさんに言われるまま、個人情報を入力し、宿の予約を入れた。
「あとは、この予約番号をメモに書いておきますから、ホテルに着いたら、この予約番号を言って、お名前を伝えれば大丈夫ですよ」
親切なおじさんに助けられ、俺とサチはその日の宿を手に入れた。
「あ、食事は明日の朝食しかついていなので、忘れないように」
「ありがとうございます」
俺とサチはお礼を言うとスマホの電源を切り、再び券売機のところに戻った。
目的のホテルがある場所までは電車で一本だった。
俺とサチは切符を買い、目的地を目指した。もちろん、夜の六時まではチェックインできないということだったが、都心に戻れば、時間をつぶせる場所は沢山ある。それに、注意されたとおり、夕食はついていないから、どこかで夕食を食べる必要がある。
宿泊先のホテルは、俺だって名前を知っているくらいの老舗の有名ホテルだ。少なくとも、俺とサチの金銭感覚で味わえるようなレストランがあるとは思えない。
サチと俺は電車に乗ると、都心に向けて出発した。
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