「自分で思ってるほど、体の方が強くないんじゃない?」

実際彼の体が丈夫そうには見えないということは、心の中で静かに続けた。

大翔は「そうなのかなあ?」と言い、枕の方へ倒れた。

仰向けになり、右腕を腹の上に載せる。

「痛むか?」と尋ねると、「大丈夫」と下手くそに笑った。

「言ったろ? どうせ顔とか雰囲気に出ちゃうんだから隠さなくていいって」

言いながらタオルケットを掛けてやると、「いつ頃帰るの?」と声が返ってきた。

「さあね。別に決めてないけど。大翔次第だよ。そっちがいてほしいならいつまでもいるし」

上から顔を覗き込むと、大翔は頬を微かに赤く染め、タオルケットで顔を隠した。

「馬鹿か。なにを恋人相手みたいな反応してやがる」

わたしは「気持ち悪いな」と続けながら、ベッドに寄り掛かるようにして床に座った。

「ねえ美紗、知ってる?」

「知らない」

大翔が苦笑するのが聞こえた。

「まあどこにもこんな事実はないんだけど、男子高校生の悩みトップスリーって、下から順に、彼女がいない、彼女がほしい、彼女ができないなんだって」

携帯のロックを解除する暗証番号を入れる指が止まった。

同時に小さく噴き出してしまい、画面に僅かに唾が飛んだ。

汚えなと心の中で騒ぎながら袖で画面を拭う。