涙に逢うまでさようなら

大翔は部屋へくると、すぐにベッドに倒れ込んだ。

腹を抱えるようにして丸まる。


彼の無事の帰宅を見送るためにきたのだが、帰ることは許されなかった。

「死にそうなときは人の存在が恋しくなるものなんだよ」と言う大翔に「死にそうなのか」と真面目に返すと、彼は黙った。


ベッドの上で小さくまとまる大翔を眺めながら、わたしは大袈裟にため息をついてやる。

「なあにが休めというわたしの言葉に対し『でも……』だよ。でももなにもあったもんじゃねえじゃねえか」

そんな余裕すらないのかなにも言葉を返さない大翔に、再びため息をつく。

「てか、夏日に冷房なしは酷だわ。冷房つけていい?」

「いいよ」という声が微かに聞こえ、「お前さん本当に大丈夫かよ」と苦笑しながらリモコンの運転ボタンを押した。

少しして冷たい風が届いた。

「幸せ」という心の声が口から発された。