涙に逢うまでさようなら

大翔はすぐにノートや教科書を広げ、勉強を始めた。

わたしも彼を真似るように勉強を始めたが、彼の様子が気になる。

頻繁に手を止め、その度に微かに顔を歪ませて深く呼吸をしているのだ。


「……大翔? 大丈夫?」

たまらず尋ねると、手を止めていた大翔はぴくりと体を震わせた。

「大丈夫だよ」と言っておきながら、拳を作る左手は腹部の左方に押し当てられている。

その手は時々、胸の下辺りに押し当てられることもあった。

「……痛いの?」

大翔は一瞬体を震わせると同時に顔を歪めたあと、「少しね」と口元に笑みを浮かべた。

「嘘つき。結構なくせに」

下手くそと付け加えてやると、大翔は小さく笑った。

先ほどより少しばかり自然な笑みが浮かべられる。