涙に逢うまでさようなら

教科書を見つけたとき、複雑な気持ちになった。

あってよかったと安心する反面、どうせ物置に押し込んで忘れていたのだろうと思うと同時に、

家族がわたしにこれを探させようとしていたのではないかとも考えた。

しかしすぐに、それは深読みしすぎだろうと自分を落ち着けた。


首に掛けていたタオルを枕のそばに放り、はあと息を吐きながらベッドに腰掛ける。

床に置いてあるペットボトルを取り、中身を飲み干した。

蓋を閉めながら、勉強机の上で重なる教科書に目をやる。

大翔は今も、勉強を進めているのだろうか。

考えると、勉強に対する憂鬱感と、大翔に対する劣等感が湧いてきた。

彼はわたしとは違い、真面目な人間だ。

加えて意思が強い。

家族を見返すと決めたら、きっと勉強漬けの日々を過ごすだろう。

そしてその日々から抜け出したらいい大学へ進み、いいところへ就職するのだろう。