涙に逢うまでさようなら

「わたし、なんか変なこと言ったりしてた?」

「別に……」

大翔は小さく言った。

「はっきり……言ってくれた方がいいんだけど。怒らせたりしてるならちゃんと謝りたいし」

なにかしていたかと改めて尋ねるも、大翔は「別に……」と呟いた。

「別に、怒ってなんかいないよ」

「本当? わたし、感情的になりやすいところあるから……無意識になにかしてたのかと思ったんだけど。そうじゃないんだよね?」

「うん」と頷いた大翔の口元に、微かな笑みが浮かべられた。

わたしは「そうか」と頷き、「あまり無理するんじゃないよ」と続ける。

「家族を見返したいのはわかるけど、それが負担になっちゃあ意味がないから」

さらに続けると、大翔は小さく笑った。


「そうだ。この教科書って中学校のだよね、なんで持ってるの?」

「ああ……。毎年、先生が……送り付けてきた……」

「送り付けてきた?」

「わざわざ家まで来て……」

「ふうん。そうか」

さんきゅ、と続けてシャーペンを握り直し、ようやく文字を書き始めた。