「なにかあったのか」と尋ねながら席に着き、ケースの中の残り少ない清涼菓子をすべて口に放った。

大翔はぴくりと体を震わせ、「なにもないよ」といまいち感情の読み取れない声を返した。

少しこわばった表情でシャーペンを走らせる。

「休息も大事だぜ?」と言いながら、わたしはトートバッグからノートを取り出した。

今度は「奪取」と言いながら大翔のノートのそばにある教科書を取る。

シャーペンの芯を出し、シャーペンを握る手に力を込めると、自分が不自然なまでに明るくしていることに気がついた。

なぜこんなことをしているのだろうと思った。

大翔が静かなら、こちらも静かにしていればいいのだ。

今のわたしたちにとってここは勉強をする場であり、楽しさを求めるような場ではない。