大翔の様子が変わったのは、その一週間ほどあとのことだった。

図書館付近や席で会っても、大した会話をしなくなった。

同時に、彼から焦りのような雰囲気を感じるようになった。


この日、いつもの席に着くと、大翔はすでに勉強を始めていた。


ケースの中の残りが少なくなっていた清涼菓子を購入するため、早く家を出てきた。

しばらく時間を潰せばいいと思っていたがあまり経ってはおらず、音楽プレーヤーは十一時三十分と表していた。


数日前に買い替えた黒いイヤホンを外しながら、大翔に「朝っぱらからよくやるね」と声を掛けてみた。

彼からは、イヤホンをプレーヤーと同じポケットに押し込んでいる間に「うん」と小さく返ってきたきり、なにも発されなかった。