涙に逢うまでさようなら

「それ辛くない?」

ふと、大翔が言った。

視線を上げると、彼はシャーペンを置き、わたしの手元にある清涼菓子の容器を見ていた。

「いや、そんなに」

食べるかと言うと、大翔は絶対に要らないと激しく首を振った。

「俺、その類のお菓子は食べない主義なんだ。前、遠足のときに持ってきてた友達にもらって死にかけたから。

なんか、飲み込んでからも続かない? スースー感。しばらく胃が冷えた感じがする」

「ふうん……」

適当に頷いたあと、死にかけたからという彼の言葉に噴き出した。


「死にかけたって、どんな食べ方したの?」

「なんだったかなあ……。事件現場はバスの車内だったんだよ。一番後ろの席で、俺は友人二人と一緒に、三人で座ってたはず。で、うち一人が保育園の頃から仲いい人で――」

「ああ。きいくん」

遮るような形で、本名の気になる呼び名を呟くと、大翔はよく覚えてるねと笑った。

「で、俺でもきいくんでもないもう一人の誰かさんが、俺ら三人とも好きなお菓子を持ってきてて。

俺ときいくん二人して『欲しい』って言ったら、意地悪誰かさん『きいか大翔どっちかにあげる』とか言って。

で、きいくんは自身か俺、どちらか負けた方が、彼の持ってきてた悪魔の清涼菓子を五粒食らおうとか言い出して。

で、二分の一の奇跡を賭けた全力のじゃんけん大会が開催されたわけ」

「はあん。で、見事あんたが負けて清涼菓子五粒を食らった、と」

わたしが言うと、大翔は「そういうことさ」と苦笑した。